―最新統計データと費用比較から見えてくる、任意後見の合理的選択―
高齢化が急速に進む日本では、認知症や障害等によって判断能力が低下した方を法的にサポートする「成年後見制度」の重要性が増しています。
最高裁判所の最新データによると、令和6年(2024年)12月末時点における制度の利用状況は以下の通りです。
出典:最高裁判所「成年後見関係事件の概況―令和6年1月~12月―」
このように、現在の成年後見制度利用者の実に約98.9%が法定後見を利用しており、任意後見(発効済み)の割合はわずか1.1%にとどまっています。 この数字は、多くの方が判断能力を失ってから「やむを得ず」法定後見を利用しているという現実を物語っています。
【ポイント】 任意後見は、本人が元気なうちに「自分で後見人を選び、内容を決める」ことができる制度です。 しかし現状では制度の認知度不足から、事前の準備なしに認知症等を発症し、法定後見を利用せざるを得ないケースが圧倒的多数を占めています。
「任意後見は費用が高そう」「準備が大変そう」と感じる方もいらっしゃいます。 しかし実際に費用の内訳を比較してみると、経済的な負担に大きな差はないことがわかります。
① 法定後見の場合の費用
法定後見では、申立ての際にまず一定の初期費用がかかります。その後、専門家後見人への報酬が終身にわたって発生します。
| 費用の種類 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 申立て手数料・収入印紙 | 約3,500〜4,000円 | 類型により異なる |
| 添付書類取得費用等 | 約5,000〜10,000円 | 戸籍謄本・住民票等 |
| 精神鑑定費用(必要な場合) | 約5〜10万円 | 裁判所の判断による |
| 専門家への申立て代行報酬 | 約15〜25万円 | 行政/司法書士・弁護士に依頼の場合 |
| 後見人への月額報酬 | 月額 2〜6万円 |
管理財産額に応じて裁判所が決定。 |
|
後見監督人報酬 |
月額 1〜3万円 | 親族後見人が選任された場合等 |
後見人の報酬は、裁判所が被後見人の財産状況をもとに決定します(東京家庭裁判所の報酬めやす)。管理財産額が1,000万円以下:月額2万円、1,000万〜5,000万円:月額3〜4万円、5,000万円超:月額5〜6万円が目安です。後見開始から本人が亡くなるまで、この報酬が終身で発生し続けます。
② 任意後見の場合の費用
任意後見の費用は、「契約締結時の初期費用」と「任意後見発効後の継続費用」に分かれます。
| 費用の種類 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 公正証書作成手数料等 | 約2〜3万円 | 公証役場での費用 |
| 専門家への書類作成・相談報酬 | 約5〜15万円 | 行政/司法書士・弁護士に依頼の場合 |
| 任意後見監督人選任申立て費用 | 約1〜1.5万円 | 発効時に必要 |
| 任意後見人への月額報酬 | 月額 0〜5万円 |
契約で自由に設定。 |
| 任意後見監督人への月額報酬 | 月額 1〜2万円 |
財産管理額5,000万円以下の場合 |
任意後見では、後見人を誰にするか・報酬をいくらにするかを本人が元気なうちに自由に決めることができます。家族・親族を後見人とした場合には後見人報酬を無報酬にすることも可能です。その場合、継続費用は任意後見監督人報酬(月1〜2万円程度)のみとなります。
③ 月額の継続費用を比較する
このように、月額の継続費用を比較すると、法定後見・任意後見ともにおおむね月3〜7万円程度の範囲に収まります。 両者の間に大きな経済的格差はなく、「費用が高いから任意後見はやめておこう」という判断には合理的な根拠がないことがわかります。
むしろ、任意後見では家族・親族を後見人とすることで後見人報酬をゼロにできるため、場合によっては法定後見よりも低コストになる可能性もあります。
まとめ ― 今すぐ任意後見契約を検討すべき理由
成年後見制度の利用者の実に約99%が、判断能力を失ってから「やむを得ず」法定後見を選択しています。
しかし、費用面での比較では法定後見と任意後見に大きな差はありません。 任意後見には、「自分で後見人を選べる」「支援の範囲を自分で決められる」「家族を後見人にできる」など、法定後見にはないメリットがあります。
判断能力があるうちに任意後見契約を締結しておくことは、費用的な負担を増やすことなく、自分らしい老後の安心を手に入れる合理的な選択です。
公益社団法人コスモス成年後見サポートセンター 会員
当事務所は、行政書士による成年後見の専門団体「コスモス成年後見サポートセンター」の会員です。同センターの研修・倫理規定のもと、質の高い後見業務を提供いたします。
任意後見契約は、公正証書によって作成しなければなりません。 単に書類を整えるだけでなく、「何を・誰に・どこまで任せるか」をご本人の意思に沿って丁寧に整理し、公証役場と連携しながら手続き全体をサポートします。
ご意向の聞取り
財産の内容、任せたい相手、生活上の希望などを丁寧にお聞きし、契約内容の骨格を一緒に作ります。
契約書原案の作成
代理権目録(何を任せるか)・報酬条項などを含む契約書の原案を作成し、わかりやすくご説明します。
公証役場 との連携
公証人との事前調整から、公正証書作成当日の立会いまでサポート。出張公証のご手配も対応いたします。
関連契約のご提案
必要に応じて、判断能力があるうちの財産管理を目的とした「財産管理委任契約」や「見守り契約」との組み合わせもご提案します。
任意後見契約を結んでおくと、将来ご自身の判断能力が低下したとき、あなたが選んだ信頼できる人が、あなたの意思に沿った財産管理や生活支援を行うことができます。法定後見と異なり、後見人を自ら指定できる点が最大の特長です。
ヒアリング・相談/契約書原案作成/公証役場への同行/財産管理委任契約/見守り契約/出張公証手配
親族が任意後見人に就任したものの、「財産管理の書類の作り方がわからない」「監督人に何を報告すればいいのか」と戸惑われるケースは少なくありません。当事務所では、後見人ご本人が就任した親族の方を対象に、実務面での継続的なサポートを提供します。
収支管理帳の作成支援
日々の収入・支出を整理し、報告に必要な収支一覧表・財産目録の作成をサポートします。
監督人報告書の作成
任意後見監督人への定期報告に必要な書類(財産目録・収支報告書)の作成をお手伝いします。
後見事務の相談窓口
「この支出は後見人として認められるか」「この手続きはどうすればいいか」など、日常的な疑問にお答えします。
専門家へのつなぎ
不動産取引・相続・医療同意など、行政書士の範囲を超える問題については、司法書士・弁護士等へご紹介します。
「家族だから大丈夫」と思っていても、後見人には財産管理の記録・報告義務が伴います。書類の不備や記録の欠落は、後に家族間のトラブルや監督人からの指摘につながることも。専門家のサポートで、安心して後見職務を続けていただけます。
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収支記録の確認・整理 |
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財産目録・収支報告書の作成 |
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個別相談・スポット対応 |
収支記録サポート/財産目録作成/監督人報告書/後見事務相談/専門家へのご紹介
「信頼できる家族がいない」「子どもに負担をかけたくない」「専門家に任せたい」——そのようなご事情がある場合、当事務所の行政書士が任意後見受任者(将来の後見人)となります。ご本人の意思と尊厳を最優先に職務を果たします。
行政書士が任意後見人に就任する場合、家庭裁判所が選任する任意後見監督人のもとで職務を行います。監督人への定期報告を通じて透明性が確保され、ご家族や関係者の方にも安心していただける体制をとります。
担当する主な業務
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財産の管理・保全 |
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生活・医療・介護に関する手続き |
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各種行政・法律手続き |
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任意後見監督人への報告 |
財産管理/介護・施設手続き/行政手続き代理/監督人への定期報告/関係専門家との連携
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が不十分になった方を法律的に保護・支援するための制度です。本人に代わって財産管理や身上監護(生活・療養・介護に関する事務)を行う「後見人等」を選任することで、本人の権利を守ります。
制度は大きく2つに分かれます。
・法定後見(すでに判断能力が低下している場合):家庭裁判所が後見人等を選任します。
・任意後見(まだ判断能力がある場合):本人が将来に備えて信頼できる人と契約で定めます。
任意後見契約は、必ず公証人が作成する「公正証書」によって締結しなければなりません(任意後見契約法第3条)。私署証書や口頭での契約は無効です。
手続きの流れは次のとおりです。
① 将来の後見人となる方(任意後見受任者)を決め、委任する内容を話し合う
② 公証役場に連絡し、公正証書の作成を依頼する
③ 本人・受任者が公証役場に出向いて契約書に署名・押印する
④ 公証人から法務局へ登記の嘱託が行われ、後見登記ファイルに記録される
任意後見契約の効力は、判断能力が低下した後に家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任した時点で初めて発生します。受任者が勝手に権限を行使することはできません。
基本的に本人が信頼できる方であれば、親族・友人・専門家(行政書士・司法書士・弁護士等)を選ぶことができます。法人が受任者となることも可能です。
ただし、以下の方は受任者になることができません。
・未成年者
・家庭裁判所で後見人等を解任された者
・破産者
・本人に対して訴訟をした者(その配偶者・直系血族を含む)
・行方不明者
専門家に依頼する場合は、報酬が発生しますので、事前に費用と内容を確認することが重要です。
本人の判断能力が低下したと判断される時期に、受任者・本人・四親等内の親族等が家庭裁判所に対して「任意後見監督人選任の申立て」を行います。
裁判所は医師の診断書等を参考に審理し、任意後見監督人を選任します。選任された後は、任意後見人が契約内容に基づいて業務を開始し、任意後見監督人がその業務を監督します。
注意:任意後見が発動すると、原則として法定後見へは移行しません。ただし、任意後見契約の内容が本人の利益保護に不足する場合には、例外的に法定後見開始の審判がなされることがあります。
財産管理とは、本人の財産を適切に管理・保全する業務です。具体的には、預貯金・不動産の管理、年金や給付金の受領、税金・公共料金の支払い、介護費用の決済、不用な財産の換価などが含まれます。
身上監護とは、本人の生活・療養・介護に関する法律行為を行う業務です。介護施設との入所契約の締結・変更・解除、医療機関との入院契約、ヘルパー等の介護サービスの利用契約などが含まれます。
重要:後見人は「契約」などの法律行為を行う権限を持ちます。実際の介護・看護行為そのものを行う義務はありません。また、後見人であっても本人への医療行為への同意(手術の同意等)は本人の一身専属的権利であり、後見人には認められていません。
後見人は家庭裁判所や任意後見監督人による監督を受けます。定期的に報告書・収支計算書・通帳のコピー等を提出する義務があり、不正が発覚した場合は解任や刑事処罰(業務上横領等)の対象となります。
さらに、財産規模が大きいケースや親族後見人のケースでは「後見監督人」が選任されることがあり(法的後見の場合)、より厳格な監督が行われます。
後見制度支援信託・後見制度支援預貯金の活用もリスク軽減策の一つです。日常的な管理に必要な資金以外を信託銀行等に預け、払い戻しには家庭裁判所の指示書が必要となるため、大規模な不正を防止できます。
原則として、本人の判断能力が回復しない限り、後見は本人が亡くなるまで継続します。「不要になったから取り消したい」という理由での取消は認められません。
後見が終了するのは、①本人の死亡、②本人の判断能力が回復し家庭裁判所が後見終了の審判をした場合(現実的には稀)に限られます。
注意:後見制度は「一度始めると原則として終わらない」制度です。したがって、安易に申立てるのではなく、日常生活自立支援事業(社会福祉協議会)や財産管理委任契約など、後見を使わずに対応できる手段がないかを事前に検討することが重要です。
行政書士は以下の業務について対応できます。
対応可能:任意後見契約書(公正証書)の作成支援・相談、法定後見の申立書類の作成、財産目録・収支状況報告書の作成補助、任意後見人・後見事務の受任
裁判所での手続き:裁判所への書類提出は本人・親族等が行います(行政書士は書類作成のみ)。裁判所での代理申立ては司法書士・弁護士の業務です。
当事務所では、任意後見契約のご相談から書類作成、後見人としての受任まで、ワンストップでサポートいたします。法定後見の書類作成についてもお気軽にご相談ください。